こんにちはstelliterです。
フォアハンド・バックハンド(今回はフォアハンド主体で)どちらにおいても必ず指導の際に触れられる
『ボールをヒットするときはラケット面を垂直に』
今日はこれについて少し考えてきたいと思います。
それではいってみましょう。
❝実際の打球時のラケット面角度は?❞
まずこちらの写真を確認いただきましょう。
フェデラーおよびジョコビッチのフォアハンドヒッティングにおけるラケット面の角度。
写真からおそらく練習時のものであるとは推測されますが、どう見ても90°(垂直)ではありませんね。
実際、ジョコビッチで82°(画面の8°を90°から引いた数字)、フェデラーに至っては73°と測定されているようです。
現実的にはジョコビッチの82°くらいがかなり平均な数字ではないかなと思います。
フェデラーの73°はかなり下向きですね。
普通で考えれば、このまま打球したらボールは真下に落っこちるんではないかと思いますが実際はフェデラー、、見事に相手コートに打ち返している。
理由は後述しますが、しかしこれらも一例にすぎません。
このラケット面の角度、、もっと伏せるかもしれませんし、もっと開いて打球するかもしれません。
その要因はどういったところにあるのか。
❝ラケット面の角度は状況によって変化するに決まっている❞
『ボールを捕らえる時、ラケット面は垂直で』
この指導、間違っているわけではないとは思いますが、あまりに場面を限定しすぎた指導ではないでしょうか。
どう考えても『打球時の状況』や道具、プレーヤーにもよるという説明が足りていないのではないでしょうか。
『打球時の状況』というのは、、
- どの位置から
- どこに向かって
- どのくらいの飛距離で
- どのくらいのスピードで
- 相手のボールの威力は・回転方向は
- インパクトは上がりっぱな、もしくは下がってきたところ
そして道具においても、、
- 使用ラケットのパワー
- ストリングの種類
- ストリングセッティング
そしてプレーヤーの個体差
- プロなのか
- 市民大会レベルのプレーヤーか
- テニス初心者かお疲れ気味の中年以上プレーヤーか
ボールに対し正しいラケット面の角度というのはこれくらい影響される要素を秘めているわけです。
だからと言って、
これらすべてを打球する前に頭にいれておくんですよ~
なんて指導もするわけありません。
あくまでこれくらいのたくさんの要素が絡み合って、それでも『ラケット面は垂直に』の指導が適していると判断した上で実践されなければ意味がありません。
道具において言うのであれば現代はとにかくラケットとストリングはボールを『飛ばす』。
そして相手から飛んでくるボールも活きがいい。
なので昔のプレーヤーと比較しても、今のプレーヤーはスピンをある程度かけてヒッティングする感覚も身に付いています。
プロはもちろんのこと、我々一般的なプレーヤーにおいても、やや『飛びを抑え込まないとオーバーしてしまう』という感覚が離れないわけで、実際そのように打って相手コートに抑え込んでいる。
❝ラケットを下から上に振るならなおさら❞
先ほどの打球時の状況にあてはめて普通にベースライン近辺、もしくはそれよりコート内側で打球するにおいては多少なりとも『垂直面よりラケット面を伏せ気味で』打球する感覚を持ってらっしゃる方のほうが多いことでしょう。
そうしないとおっかなくってコートに収まる『気がしない』。
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併せていうと、
『ラケットは下から上に振る』
これも一般的な指導法。
そして間違った指導法でもないわけです。
少なくとも
『上から下に振る』
この状況、、場面によってはもちろんそういう事もありますが、これはかなり限定的。
(これロディックの打ち下ろしフォア。頻度としては少ないでしょう)
少なくとも通常ラリーにおいてこの意識をもってスイングする人は少ないんではないでしょうか。
ということは、下から上という軌道を描いてボールに激突するラケットが『90℃の垂直面で』ボールにヒットしたらどうなるでしょう。
前項におけるあらゆる状況も考慮したとしてやはり同じ、、コートに収まる『気がしない』。
そして実際にそのボールはベースラインをはるかに超え、どこか彼方に消えゆくことでしょう。
しかし、
いやそんなことないよ、正しい指導ができていないだけだろう
垂直面で捕らえてドンピシャな場合もたくさんある
という意見もあるでしょう。
そうです、その『ラケット面を垂直にして打つ』ことできちんとコートに収まる状況というのももちろん存在します。
それはどういう状況なのか。
❝では実際に垂直面で捕らえるのがベストな状況は??❞
基本とされる、、
『ラケットを下から上に振る』
『ラケット面を垂直にしてインパクト』と併せてこれも指導されているとしたらなおさらですが、ベースラインもしくはそれよりやや後ろから、ある程度高めの放物線を描いて相手コートに打球するケース。
これが一番垂直面でボールをヒッティングするに適しているのではないでしょうか。
要するに『初心者に対する球出し』がそれに当てはまります。
総体的に初心者はまだスイングスピードもゆっくり、そして球出しのボールは勢いがつかないわけですから、『下から上に振る+ラケット面を垂直』
これでもしっかりコートに収まる。
この理由で考えたら、確かに一般的な指導の際、『ラケット面は垂直に当てましょう』が成り立つとも言えます。
❝インパクト時の強弱がかなり影響する❞
しかし例えば、明らかに垂直より開き目にラケット面をセットして打球するスライスとボレー。
この2つ、明らかに『思いっきりスイングしない+上から下にスイングする』
ボールが上に舞い上がらないように、特に指導することなくほっておいてもプレーヤーはラケット面をコントロールするようになります。
そして確実に『力を加減する』
こうしないと望んだとおりコートにボールが収まらないからです。
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あと例えばロブも同様、垂直ではなく95°とか100°とか、開き気味のラケット面で打球することも十分あり得ますし、むしろそれが正解なはず。
(これはバックハンドでのロブですが面は上を開いて打球しているのがわかります)
そしてその時にもボールへの入力はソフトなはずです。思いっきりフルスイングしてロブ打つ人はいませんよね(激烈トップスピンロブなら話は変わりますが)。
フルスイングして面を開いてロブなんて打っちゃった日にはオーバーザフェンス間違いないでしょう(笑)
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スライスやロブを引き合いに出したのは、要するに打球する際の強弱も大きく影響するからです。
同じラケット軌道、同じラケット面で打球しても、強弱によってはコートに収まる場合もあるし収まらないこともあるということです。
❝厚い当たりに関しては❞
よく『厚い当たりで力強いトップスピンを』と推奨されますが、これに関しても考え方は様々です。
単純に回転量だけで言えば厚い当たりではなかなか回転量は稼げませんよね。
厚い当たりというのは今回テーマのボールに対して『ラケット面が垂直に』当たるに近い。
要するにボールとラケットが『正面衝突』するに近いわけです。
①と②に関してはまさにそのボールとラケットが『正面衝突』している状態で、ボールがもつ威力はすごいものになりますが、トップスピンに求められる回転量としてはどうでしょう、あまり期待できないのではないでしょうか。
かたや③と④は前への推進力という点においては劣りますが、ボールの回転量ということだけに関して言えば間違いなくこちらのほうが大きく作用すると言えます。
『スイングスピード(衝突力)+ラケットとボールのオフセット量(ズレた当たり方)=トップスピン量』
この図式は間違っていない。
これで考えると、『ラケット面は垂直に』は厚い当たりの実現は可能ですが、少しはオフセット量も考慮しないと結果トップスピンには転換できないわけです。
ナダルのボールのスピン量とスピードがもの凄いのは、この両方を尋常ならざる高い領域で両立させているからです。
われわれの筋力とスキルではとてもムリムリ。
❝またまた登場:卓球ならどうだ??❞
卓球がいい例です。テニス以上にラケット面を伏せる傾向にあるのはご存じかと思います。
(世界№1馬龍のフォアハンド、ほとんど45°のラケット面で打球している)
よりスピンをかけないと台上に収まらないということに加え、『粘着系ラバー』なる、ラバーにボールがぴったりくっつくほど強烈に『食いつく』用具も存在するわけです。
ここまで食いつくからには、かなりラケット面を伏せボールにオフセットした状態でヒットしてもカス当たりになることなく、結果的に豊富な回転量を得ることができます。
❝ラケット面の角度:結局状況に応じて調整する❞
卓球のくだりは極端な例ではありますが、以上のことから結局タイトル通りなのではないでしょうか。
ボールを打つ時、『ラケット面は垂直に』の指導は、あまり端的過ぎて意味をなさない。
プレーヤーが幾度となく経験を重ねることによって、ボールが行き交う瞬間に都度求められる適切な面角度に調整しながら打球していくことになると思うんですよね。
単にネットしたという事実に対し、、
面が伏せていたよ、、ラケット面を垂直にして打たないと
もしくはオーバーミスしたとしても
面が開いていたね、、もう少し閉じて垂直で捕らえよう
これらは先ほどまでにお伝えした、数えきれないほどの要素(状況・道具・プレーヤー個体差)が積み重なった上でのショット結果ですから、ラケット面の角度だけで成立しないなんてことは
あったりめーじゃねぇの??💦
という感じです。
よっぽど繰り返しの球出し練習、しかもかなり再現性の高いものでなければ、同じように保たれたラケット面での打球がコートに収まる保証などどこにもありません。
そしてゲーム中にそんなボールは絶対に飛んでこない。
少なくとも2度3度と続くことなど『八百長』でなければあり得ない(笑)
実に当たり前のことですし、少しでも経験あるプレーヤーであれば今回の記事説明などまったく不要であると自覚しています。
しかし、ちょっとボールを打てるようになってきた程度のテニス初学者が万一勘違いしてしまうことなきよう、指導される方はぜひともご注意願いたいですね。