こんにちはstelliterです。
ちょっと前回から空きましたが今日はラケットメーカーに対する印象
「PRINCE編」
を書かせていただきたいと思います。
個人的には大好きなPRINCE、、大苦戦の長文となりました(笑)
それではいってみましょう。
<PRINCEというメーカー>
1970創業のアメリカのテニス用品メーカーです。テニス以外にもバドミントン・スカッシュなどラケットスポーツ運営を中心にしています。
そんなに古い会社ではありません。
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ご存じの通り、PRINCEといえば
“グラファイト GRAPHITE”
ですよね。
1976年に発売されたこのラケットは、当時70~80インチのフェイスサイズラケットが常識だった業界に半ば“色物”扱いで登場しました。1980年あたりから当時のプロも使用し始めて、80年代後半にはアガシ、サバティーニ、チャンなどトップの選手も使用しはじめ、その評価が世界的なものとなりました。
折しも日本もその前からのテニスブームも影響し、人気選手も使っているのを見て
「あのデッカいラケットはなんだ!?」👀
となったのでしょう、、真ん中に目立つクロスバーとそのドデカフェイスが代名詞であるグラファイトは、あれよあれよと空前絶後のスーパーヒットを記録し、日本中どこのコートでも一般愛好家が使用し始めたのです(当時の私はまったく知りませんでしたけど)。
どれくらい世界にその名が知れていたのかは私にはわからないのですが、テニスラケット単体でwikipediaにページとして存在していることが、グラファイトが如何にその当時世界のテニス界を席巻していたのかがうかがえますね。
おそらく、のちのピュアドライブよりもセンセーショナルだったことでしょう。
<シェアはどんな感じ?>
(ATP)
ご覧のとおりです。昨年のTOP100において使用選手は3人のようです。思い当ってもイズナーとプイユくらいしか思い浮かびません。
それ以前はもう少し(2015年は一応はYONEXを上回って、ギリ4位)シェアもあったかなぁという印象でした。
もっと以前は華やかかりし時代もありました。フェレーロ、フェレール(名前似てる・・)、モンフィス、ダビデンコそして先述のイズナーなど、なかなかのメンツですよね。
ダブルスのブライアン兄弟もBABOLATに行っちゃいましてそのまま引退っぽいですが。
(WTA)
こちらはもっと少ないですね。2012年?あたりにPRINCEと生涯契約していたとされるシャラポワを失ったのが非常に大きかったです。
それまではシャラポワ以外にも、ヤンコビッチやハンチュコバ、ズボナレワ、そして杉山愛選手など一定数、しかもトッププロが使用していたと思いますが、ついに昨年2019年にいたってはTOP100に一人しかいませんでした(誰か知りませんけど)。
とにかく世界シェアとしては厳しい現状と言わざるを得ません。
2012年の民事再生法(チャプター11)申請にまで追い込まれ事実上の倒産、後米国のAuthentic Brands Groupの下に再建という非常に不遇の2010年代を過ごすこととなりました。
後述の市場および個人的印象でもまた触れたいと思います。
<ラケット評価>
あらかじめ:PRINCEのラケットに関してはその年代ごとの傾向として私自身2000年代中期以降(O3登場以降くらい)からの知識となります。ご了承いただけると幸いです。
(先にO3説明)
まあラケット好きな方が知らないことはないと思いますが一応
「O3って何よ」
とおっしゃられるのもなんなんで説明します。
ラケットサイドのストリングが通る穴(パーツ名はグロメットといいますが)は普通3~5mm程度のサイズなんですが、O3は指1本入るんじゃないかというくらいに大きな穴が開いています。
メーカー発信によるメリットとして、ボールを打った時にストリングがその大きな穴の中で大きく動くことにより、スイートスポットを普通のグロメットタイプのラケットとの比較で最大で50%ほど広げることを可能にした
というような画期的(?)なアイデアなんです。
しかしそのスイートを広げた代償は大きく、多くのプレーヤーがその打感に対しとてつもない違和感を覚え、、「やーめた!」とPRINCEの新技術を敬遠したという経緯があります
こんなところでしょうかね。
さて各カテゴリーの説明に入ります。
(ツアー系)
O3が世に出てからTOUR MPが一気にPRINCEの旗艦モデルとなりました。併せてディアブロやO3のグラファイト、ツアーグラファイト(往年のグラファイトの後継)も販売され、オールドファンから一部需要もあったものの、やはりTOUR MPが看板商品でした。
薄ラケの典型であるTOURシリーズはその後、2代にわたり後継が発売され、その間O3はEXO3という丸穴が四角穴にモディファイされました。
2014年ごろから、ほとんどのPRINCEラケットに「テキストリーム」という高剛性スウェーデン製カーボンを搭載。カラーリングもいろいろと一新され、ツアー系としてはXシリーズという変わり種を除いてファントムと伝統のTOURシリーズで落ち着いています。
薄ラケ特性のなかでも群を抜いて薄いファントムは最薄部でなんと16.5mmという超極薄なフレームを採用。しなり感+テキストリームさらにトワロンという新素材まで組み合わせ、独特の打感を生み出し、見た目もさることながら他社との差別化を図ったようです。
最近ではそのPHANTOMにさらにグラファイトシリーズも投入しました。
見た目もグリーンが鮮やかですし、高剛性なラケットに仕上がっていて、なおかつ打感が柔らかく飛びもいいというツアー系好きにはたまらないテイストに仕上がっているようです。
ただしTOURシリーズはともかく、PHANTOMはその極薄形状に反して想像以上に飛びや、しなりの癖が強いということに加え、TOURシリーズとPHANTOMは同じ薄ラケということで、ややスペックかぶり気味であることから「同時投入する意味はあったのかな?」と少し疑問に思う部分もあります。
(黄金スペック系)
同じくO3を黄金スペックに搭載し、ただでさえ飛ぶラケット特性をさらにキワモノ扱いされるくらいにカッ飛び仕様に変貌させたO3XFやO3WHITE、そして名器O3BLACKと続けて販売し、O3をEXO3に変更した後は、ハリアーと名称を変え、その後BEASTシリーズとつながっています。
ハリアーがでたあたりで通常のトラディショナルグロメット(PRINCEさんだけがこの呼び方をしていますね)バージョンも同時発売。
PRINCEがあらためてO3の失敗を認めたことが浮き彫りとなりました
通常グロメットラケットの同時投入あたりから、思いっきり「普通のラケット」になってしまったという評価です。テキストリームという高級素材を採用して、打感や剛性に高級感や所謂”締まり”がでたのは大いに評価しますが、同時にそれは他社ラケットの進化も同じこと。特筆すべき点が見当たらなくなったようです。
(パワー系)
もともとここはPRINCEは強いジャンルなはずでしたが、私にあまり知識がないため今回は割愛させていただきます。
一応O3BLUEやRED、PINK、SILVERなど色分けと同時にパワーの区分けされているラケットが販売されていましたね。結構年配のプレーヤーがお使いなのを見かけました。
<市場でのライバル>
最新ランキング:
最新ランキングでは価格ドットコムさんにおいて全く上位にPRINCEはランクインしておらず、ようやく33位にBEAST O3 104が入っていました。
楽天さんのデイリーランクで25位に同じくBEAST100がランクインでした。
ふるいませんねぇ・・
HEADやYONEXといったマジメ路線(?)メーカー相手ではなく、どちらかというとBABOLATやWILSON(品質・販売いずれも絶対に勝てないですけど)の両メーカーをライバルに見据えているかな?というラケットラインナップです。。
対抗もPROSTAFFやBLADEに対してPHANTOMやTOURシリーズ、ピュアドライブとULTRA(いやCLASHかも)に対してBEASTをぶつけているといったようなところでしょうか。
しかしながらATP・WTA使用率が表しているように市場においては全く振るわず、セールス的には完敗、、足元にも及んでいません。
ましてやWILSONにはPROSTAFFとBLADE、BABOLATにはピュアドラ・アエロというそれぞれ各カテゴリーにおける横綱がそびえ立っているわけで、HEADやYONEXでさえその牙城は崩せないでいるのですから、ましてや今のPRINCEでは敵うわけはありません。
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国内ではそれなりに見かけはします、特にBEASTでしょうかね。その他でいえば先のPHANTOMも今現在はごくまれにしか見ませんし、ましてやXシリーズなど私の周りではだれも使用しているのを見たことがありません。
これは私が学生さんやバリバリ上級者と対戦などしないからあまりお目にかけない理由なのかもしれませんが。
むしろ初期のO3やEXO3の呼び名の頃のラケットのほうがよく見ます。あとは今だ往年のグラファイトもたまに見ます(笑)
O3シリーズが登場したころから2010年あたりまでは、そのO3の珍しさと信じられないくらいのカッ飛びぶりが良くも悪くも話題になり、国内セールスは数年間はそこそこ好調な期間を過ごせたと思います。
しかしながら2010年以降のEXO3変更後あたりからセールスは落ちはじめ(そんな印象です)、繰り返しになりますが、前述のシャラポワ移籍とチャプター11適用など、いいイメージをなかなか保てていないのが市場にも表れたという感じです。
<国内限定品の評価>
PRINCEはグローブライドの独自展開(?)で国内限定販売ラケットの数が他メーカーと比較しても多く、私の知ってる限り2010年代初頭は本当に積極的に販促していました。
- グラファイトS、グラファイトT
- BLACK 100T、BLACK 104T、J-PRO BLACK
- 国内用イグナイト(見た目が全然違う)、シャーク、シャークDB
などです。もっとたくさんあったかもしれません。
これらは日本人向けに設計されたという触れ込みで発売され、どのモデルもスウィングウェイトをそろえてある(285だったかな?)ので振り抜きがいいと評判で、販促もそれなりに頑張ったのですが、思ったような販売結果を得てはいなかったのではないでしょうか。
理由として、中古の球数が思ったほど出回っていないと感じることに加え、数年前に新モデルが発売されたのちに恐ろしく安い価格で旧モデルが投げ売りされている状況を見たことがあります(新品未使用のイグナイト98が1本3000円で何本も店頭に並んでいたのは衝撃的でした)。
売れなかったのですかね・・
<個人的印象>
今に至るまで継続しているPRINCE独自のテクノロジー
「O3」
そのあまりにも異質な特徴を
「スイートがめっちゃ広い!」
「追い込まれたときラケットが助けてくれる」
という一部ユーザーの感想に、PRINCE設計陣の狙い通りの評価を得たと思ったのでしょうが、それ以上に
「制御できねえよ」
「打感がまったくもって好きになれない!」
「どこで打ってるのかわかりゃしないよこのラケット」
という意見が完全に高評価を上書きする勢いで増えていってしまい、あっという間にO3ラケットは「キワモノ扱い」されることになりました。
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日本ではグローブライドが以前からその販売契約ライセンスを担っていますが、苦戦しているとしか言いようがありません。
ピュアドライブの黄金スペックを他社が血眼になって追っかけて行ったにもかかわらず、O3に関してはどこのメーカーもほとんど真似されなかった(ちょっとだけホールを大きくした他社製品はありますが)という事実もO3の失敗を大きく表しています。逆にPRINCEは黄金スペックを追随したというのに。
「O3だけではイカン!」
とPRINCEは遅れながらも判断し、EXO3以降のモデルにはそれぞれ必ずと言っていいほど通常グロメットタイプのラケットも並行して発売するようになり今現在もそのスタイルです。
結果、それまでO3に慣れ親しんだ特異な(?)PRINCEユーザーにとっては新鮮味があったようなんですが、他メーカーのラケットユーザーにしてみれば目新しい印象はなく、今更試す気にもならなかったようです。
このころのPRINCE営業の方たちはほんとに苦労なさったかと思います。
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O3での販売戦略失敗とシャラポワ移籍、そしてその影響かチャプター11適用という負の連鎖からなかなかPRINCEは立ち直れていないようです。
2014年以降、テキストリームという新素材採用を切り札として市場に投入し、カラーリングや各ラケットの名称も一新して、
「これは勝負にでたなPRINCE」
と誰の目にもそう映りました。販促活動もかなり積極的に行われ、アピール性は非常に高かったです。
しかし結果的に思ったほどの実績に達したとは想像に難く、常にTOP4の後塵を拝する形となっており、おそらくSRIXONにも水をあけられていたのではないでしょうか。
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(グッドポイント!)
ただ、個人的にグッドな印象もあります。
それはラケットの「ルックス」です。
かっこいいですよねー
単純にラケットのデザインやシェイプなどのいわゆる
「見た目」
はかなりPRINCEはセンスに優れていて、
「ほ、欲しいなこのラケット」
と思わせるものが何本も発売されています。
ただ惜しむらくは
「これがWILSONだったら飛ぶように売れるんだろうな~」
と心の奥で繰り返してしまいますね。
<PRINCEのラケット開発は・・>
グラファイトやO3を中心とした、いわゆる
「アイデア商品」
「企画もの」
「デザイン性(これは大事です!)」
といった着眼点には一目置かれるPRINCE。斬新なラケットデザインはいつの時代も評価が高く、若い層には特に人気がありました。
グラファイトはラケットの実力およびその画期的なアイデアという両輪がうなりをあげて回転し、世界的ヒット商品となったわけですから。
しかしながら、いかんせんここ15年はラケットの基本となるカーボン技術においては甘く見たのではないでしょうか。
2000年代のトリプルスレット全盛期はグラファイトタングステンやチタン配合、グラファイトテキストリーム(今のテキストリームとは違います)など、素材を中心にラケットづくりにこだわりがあったように見受けられました。
しかしいつの間にやら、見た目優先と単なる思い付き方向へとシフトしていった結果と思われても仕方ないです。
合わせて失礼ながら申し上げると、単純なラケット開発力ではTOP4に明らかに見劣るPRINCEという感想をわたしは持っています。
<PRINCEまとめ>
ストロングポイント
- テキストリーム採用以降のモデルには完成度と実直さが感じられる
- デザイン性は相変わらずセンスがいい
- PRINCEというメーカーキャラは明るい
- 販促は積極的だ
マイナスポイント
- 使用している有名選手が圧倒的に少ない
- とにかく昔のPRINCEを知っている人から見たらかなり売れていない。
- 正直ラケット性能では明らかにTOP4に劣る(と思う)
総合的な
個人的おすすめ度:★★✬☆☆(星2.5ですね)
どのメーカーもなしえていないほどの世界シェアを成し遂げたグラファイトを世に出したのもまたPRINCEです。
なにかユーザーに訴えかけるセンスをいまだ持ち続けているのだと期待しています。
2020年はグラファイトもいろいろと復刻させるようですので、再び飛躍していってもらいたいです。